第8回笑顔相続シンポジウム

2021年12月1日、一般社団法人相続診断協会の開催する『第8回笑顔相続シンポジウム』に参加しました。
一般社団法人相続診断協会とは、遺族間での争いに発展してしまう相続問題をなくすため、相続に関する知識を世の中に広め、生前に相続について家族間で話し合える社会をめざすという思いのもと、10年前の2011年12月1日に設立された団体です。
そして、相続に関する知識や問題を世の中に啓発していくため、私も取得している相続診断士という資格を生み出しました。

さて、そのシンポジウムではどのようなことが話されていたのか...
一言でいうと、設立されてから10年が経ちましたが、まだまだ相続に関する知識が世の中に広まっているとはいえず、今後はより一層の努力が必要だということでした。
確かに親など本人を前に「あなたが亡くなったときに備えて準備がしたい」というような話を切り出すことはとても難しいですよね。
特に日本ではそういった話がしづらい雰囲気が強くあるのかもしれません。
ドイツでは遺言書を残している高齢者は約50%ほどいるそうですが、日本ではまだ8%ぐらいしかいないらしいという話も出ていました。
8%でも結構多いなぁと思ってしまいましたが皆さんはどのように感じますか?

また、こんなお話もありました。
日本人の平均寿命が年々上がり続けている中で「老老介護」という言葉もよく耳にするようになってきました。
65歳以上の高齢者を65歳以上の高齢者(配偶者や子ども)が介護している状態のことをいいますが、介護者に占める65歳以上の方の割合が年々上昇しているようです。
2001年では約40%だったのに対し、2016年では約54%にまで上がってきているとのこと。
仕事を引退したとたん、のんびりする暇もなく親や配偶者の介護の必要に迫られるという可能性が、私を含め日本に住むほとんどの方々に関係する事実として降りかかってきます。
いざ親が、配偶者が、自分がそうなったとき、どうすればよいか?
もちろん万全の準備ができるということは難しいかもしれませんが、健康に気を遣った食生活、住環境の整備や保険など、事前に準備できることは確実にあります。
メディアで取り上げられることも多く、さまざまな情報が出てきておりますので、いろいろな取り組みを実践されている方も増えてきているのではないかと思います。

そんな「老老介護」と近接の問題として「老老相続」という問題も深刻化しています。
高齢者が高齢者の財産を引き継ぐということですが、相続する者が高齢であれば、相続した財産を有効に活用したり処分したりということがより困難になる場合があります。
例えば...

  1. それまでの生活基盤を変えたくない
    遠方の実家を受け継いだという場合、まだ若いころであれば実家に移り住むことを検討したり、いろいろ整理して売却したりということも比較的にしやすいですが、高齢になり自分の生活基盤ができていれば実家に移り住むことも現実的ではない場合が多く、ではいざ売ろうとしても場所によっては買い手がなかなか見つからないということもありえます。
  2. 認知症などにより意思表示ができなくなる
    認知症などを発症し自己の意思を明確に表示できなくなると、相続した財産の処分に不都合が生じます。
    具体的には不動産を売却したり遺言書を書いて引き継ぐ者を定めたりといったことができなくなります。
    相続人となる者が十分な意思表示ができない状況だとしても、いざ相続が発生してしまえば問答無用で相続問題の渦中に入らざるを得ない点は大きな問題であり、ほかの相続人の負担も増すことになってしまいます。
  3. 相続人が複雑になる・増える
    高齢になれば、相続人となるべき人の方が先に亡くなっているということや、離婚や再婚をしている、孫がいるなど、相続関係が複雑になり、相続人を特定する手間が増えることもあれば、その結果相続人が増えてしまうという可能性も高まります。
    場合によってはほとんど会ったこともない甥っ子や姪っ子に連絡を取らなければならないということもありえます。
    ようやく連絡が取れたとしても、すんなりと話が進むとは限りません。
    一から説明してご納得いただくまでには結構な手間がかかる場合もあります。

以上のような理由で相続に関する手間が増えると、必要に迫られていなければ放置してしまうということもあるかと思います。
しかし、放置したとしても日々の管理費や固定資産税などの税金はかかりますし、老朽化した不動産の修繕費が発生することもあります。

こうして負の遺産と化してしまうと、いざ相続が発生したときに相続人の間で揉める原因になります。
実は「老老介護」の問題と同じように「老老相続」にも事前に対策できることがあるのです。
むしろ事前に準備しておくことで多くの問題を解決することができます。
しかし、現実に相続が発生する前は「何が問題なのか」「問題の火種はどこに隠されているのか」といった問題はなかなか見えてきません。
そこで、一般社団法人相続診断協会は「相続診断チェックシート」という、30個の〇×式の質問に答えることで相続発生時に問題となりうる人間関係などの危険度を計れるツールを作成しているということです。
シンポジウムでは保険業界や不動産業界など多くの業界で活躍されている相続診断士の方々がお話しされておりましたが、この「相続診断チェックシート」をとても有効に活用されている方が多いと感じました。

そこで当事務所でもこの「相続診断チェックシート」を用い『相続の健康診断』なるものを行おうと思い立ちました。
〇×で答えるだけの簡単なものなので気軽にお試しいただけますし、ご家族へ相続問題を切り出すきっかけとして多くの方に活用してほしいと思います。

投稿者プロフィール

鈴木 章宏
鈴木 章宏
池袋に事務所を構える司法書士。
不動産の相続登記や遺言の作成支援など、相続手続きに力を入れています。
相続は事前に準備をしておくことで救われることが多くあります。
一人でも多くの方が相続の事前準備の重要性を知り、ご家族の明るい未来を作っていけるような社会にすべく、有意義な情報発信をしていきたいと思います。